聴く道の発見 聴くことを育てる音楽教育
ラインヒルド・ブラス(著)
古賀美春・神田純子(共訳)
音楽教育者必見の書籍です。
ラインヒルド・ブラスはヴィッテンのヴァルドルフ教育研究所の音楽講師です。彼女は1979年に共同設立した自由ヴァルドルフ学校、ヴィーダーシューレ・ヴァッテンシャイトで建設的な仕事に長く携わり、1年生から8年生までの音楽教育のために、慣例に囚われない構想を育みました。
「「私がしているのは、Audiopaedie - 聴くこと(ラテン語でaudire)に携わる教育なのだ!」という認識が、私に生じたのです。
Audiopaedieは、広い意味で療法therapieのひとつのあり方でもあります。ギリシャ語の動詞therapeueinには「治療する、世話をする、庇護する」という意味があります。子どもたちは、過度の感覚印象や洪水のような聴覚への負担、そしてまた静けさのない中で自分自身を見失ってしまうことから守られなければなりません。(中略)
Audiopaedieは、聴くことを学び、聴くことを促し、深め、強める(Kunst)のです。したがって、あらゆる困難にもかかわらず、音楽教師は誰でもAudiopaedeになるべきであると私は確信しています。(中略)
本書で述べられた練習は、20年以上にわたる本当にたくさんの子どもたちとの授業活動からできたものです。当時このような活動の手本となるべきものはなく、ただ自由音楽学校における私の先生からの数多くの示唆があるのみでした。したがって、ここに描かれた道程が、他の人々にも歩けるような道となるように、目に見え、聴こえるものとなるまでには長く時間がかかりました。
ルイジ・ノノは、ジュネーブ講演「必然性としての誤謬」(Stenzl 1998,105頁)の中で次のように言っています。
静けさ
聴くことはとても難しい
とても難しいのは、静けさの中で他者を聴くこと
願わくば、これらの示唆が、開かれた耳に出会い、聴くことから始まる療法的、教育的音楽授業という、新しい音楽授業のあり方を励ますものとなりますように。」(本書P13〜P15「はじめに」より)聴くことはとても難しい
とても難しいのは、静けさの中で他者を聴くこと
[目次]
- 序文
- はじめに
- 状況
- 音楽するための前提
- 《私は歌えません!》
- 内的 外的条件
- 音楽と動き
- 《私は歌えません!》
- 聴覚の養成
- 聴覚の鏡としての声
- インスピレーションの源泉としての音楽授業
- 傾聴する存在としての教師
- 音楽性の目覚め
- 聴覚の鏡としての声
- 各学年での実践
- 1年生
- 原像への問い
- 動きながら聴く練習
- 輪になる練習
- 四角形の練習
- 三角形の練習
- 動きながら聴く練習
- 創造的自由
- 練習:演奏者の交替−共に歌うこと
- 練習:《オーケストラ演奏》
- 練習:演奏者の交替−共に歌うこと
- 明るさと真剣さ
- 音楽の前段階としてのファンタジー
- 練習:輪の中での自由な選択
- 笛とキンダーハープ そして7つの音への信頼
- 像と響き
- 原像への問い
- 2年生
- 多彩な楽器使用
- 練習
- 練習
- 練習
- みつけることの意味
- 注意深さの達人としての教師
- 笛
- 声
- 練習:《ミツバチ巣箱》−声当て
- 練習:ついて行く
- 練習:《ミツバチ巣箱》−声当て
- バランスをとる、聴く、演奏する
- 聴覚の空間
- 輪になって練習
- 練習:《背中で聴く》
- 練習:《目隠し遊び》
- 練習:導くことと従うこと
- 練習:石で演奏
- 練習:《石のオーケストラ》
- 輪になって練習
- 多彩な楽器使用
- 3年生
- 移行の時期
- 練習:五角形
- 練習:八角形
- 練習:五角形
- 笛
- 練習:《笛オルガン》
- 練習:オスティナート
- 一声から二声へ
- 練習:《旅行の荷造り》
- 練習:《笛オルガン》
- ライアー
- 楽譜
- 歌うこと
- 移行の時期
- 4年生
- 故郷としての歌
- 練習:《チューリヒ駅》
- 練習
- 練習:《チューリヒ駅》
- リズムの練習
- ハンドホルツを用いての練習
- クニーホルツを用いての練習
- 練習:木を転がす
- ハンドホルツを用いての練習
- 創造的カオス
- 分数計算のための練習
- 自由な歌唱と笛の演奏
- 練習
- 笛の練習
- 練習
- ライアー演奏
- 練習:流れる形
- 練習:二声の自由演奏
- 練習:流れる形
- 故郷としての歌
- 5年生
- 拍子とリズム
- 歌うこと
- ペアーを組んで練習
- 練習:「歌っているのは何人でしょう」
- ペアーを組んで練習
- 笛
- 練習
- 拍子とリズム
- 6年生
- 多様性のチャンス
- 内的に聴く
- 4つのグループで練習
- インターヴァルの導入
- 間にある空間の体験
- 練習
- 境界の体験
- 練習
- 音程を正しく取る
- グロッケンシュピール
- 練習
- 太鼓
- 練習:左に−右に
- 練習:4拍子と3拍子
- 練習:模倣
- 練習:三つの太鼓での自由な会話
- 練習:左に−右に
- 同時代人となること
- 多様性のチャンス
- 7年生
- 共同体の中の個性
- 楽器即興グループ
- 練習
- 共に学ぶこと
- 声と声変り
- 共同体の中の個性
- 8年生
- 即興を自立して導く
- 音の対話
- 三つの位置関係
- 動きの練習
- 即興を自立して導く
- 1年生
- メディア
- 授業の始まりと終り
- 楽器
- 木製の楽器
- 金属の楽器
- コロイの笛
- その他のコロイ楽器
- キンダーハープ
- ライアー
- 木製の楽器
- 聴く人になる
- 感謝の言葉
- 文献
- 住所
- あとがき
- 著者紹介
ラインヒルド・ブラスは、ルール地方ヴィッテンに住んでいます。特別教育音楽科での学びと、ヨーロッパで活動している教師の元に滞在して学ぶシステムの「自由音楽学校・芸術-教育-療法」での研修の後、1979年にヴィーダーシューレ・ヴァッテンシャイト(自由ヴァルドルフ学校)を共同で創設し、そこで2000年までは音楽教師として、1989年から1997年まではクラス担任としても働いていました。この学校は設立当初から、広い意味で捉えた聴く教育としての音楽授業に重きを置くことを目指していました。ラインヒルド・ブラスは、ここで動きや即興、そして新たに開発された多様な楽器を中心とした、慣習に囚われない音楽授業を1年生から8年生まで展開したのです。
2000年から、ラインヒルド・ブラスはヴィッテンのヴァルドルフ教員養成所で、1年生から8年生までの音楽授業の教授法と発声に重点を置いて講師をしています。1998年以降、日本でも定期的に講座を開き、2001年、横浜にアウディオペーデ研修所を設立しました。2005年にはヴィッテンにアウディオペーデ研究所を創設。この自由な研究・養成機関は、社会的、教育的、治療的職業に携わる人々に向けて、教育、並びに聴くことのための練習法や教授法を中心において活動しています。
寸法:横 約15.5cm×縦 約21.7cm×厚み 約25mm
240ページ
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