月とヨモギ 女性性に寄り添う薬草
(共著)吉田 秀美/丹羽 敏雄
植物という対象が自ら語る言葉に聞き入り
私たちの魂の中に受け入れ
対象の本性を見抜こうとする…
ヨモギは立派な花を咲かせようとするキク科の一員なのに、花の形成を拒むように生命的な領域に留まり続けようとします。これがヨモギの最大の特徴なのです。
夏が近づくと側枝を伸ばし始め、繊細な葉をつけるようになります。こうしてヨモギは、旺盛な地上的生命力と同時に 香りなどの天上的な質も保持し続けます。 このヨモギの姿こそ、とくに女性の月経に関わる諸症状への有効性が期待される、薬用としてのヨモギの源泉です。
その姿は月の持つ二面性そのものであり、女性の月経リズム と深く重なり合うのです。
古来の人がアルテミン「月の女神」と呼び、
薬草としてその効用が広く知られた、ヨモギ──
本書は、その姿をあらたに呈示する
「ドイツを代表する文豪ゲーテは、詩人であり、同時に進化論の先駆者のひとりとしても知られ、植物など自然を生き生きした芸術的感性でもって観察する「目の人」でもありました。そのゲーテが創始し、シュタイナーによって拡大、洗練された観察法 ---ゲーテ的自然観察法--- をもとに、ヨモギを観察することを通して、いわばヨモギの中に埋もれている宝を再び見出そうとするのが本書の大きな目的の一つです。(中略)
本書は大きく分けると二つの部分からなっています。一つはゲーテ的観察を通して観たヨモギの姿、そして上述したように、ヨモギの薬用効果を調べることです。もう一つは、天体の月です。(中略)物質としての天体に全く限定してしまっているのです。しかし、今日でも月は私たちの魂だけでなく、生理まで影響を及ぼしています。ただ私たち人間は、ある意味でその力を私たちの内部に取り込んでしまっているので、外にある月の変化に即応して私たちが外面的に変化する事はほとんどありません。しかし、それは私たちのまさに意識が及ばない「無意識」の中で作用し続けているのです。この月の力はもちろん人間にだけではなく、植物を始めとするあらゆる生命に---植物の場合は直接的に---影響を与えています。こうした力に気づくことは、先に述べた私たちの魂という豊かな土壌の本来の姿を取り戻す上でも必要です。本書の後半(7章〜9章)においては、こうした月の諸力に、主としてギリシャを始めとする神話や物語を通して迫ります。(中略)
本書の力点は、薬用植物に対するゲーテ的観察に基づく「合理的」アプローチが可能であることを、ヨモギを例として述べることにあります。しかし、本書で提起された様々な症状に対する薬剤として実際の使用に当たっては、言うまでもなく慎重さや、さらなる実証などが求められます。また本書はもともと著者のふたりが主催する、ペリカンの薬用植物学などを研究する「植物観察の会」と、惑星などの天界が人間や植物に及ぼす影響を考える「星と身体」が母体になって構想されました。本書は執筆はふたりの共同作業によりますが、主に6章までは吉田秀美に、7章以降は丹羽敏雄によります。」(P4〜P7「まえがき」より)
【目次】
- まえがき
- 1. ヨモギと出会う
- 2. ヨモギの観察
- 3.『キク科』の中のヨモギ
- 4. ヨモギの熱と光
- 5. 月とヨモギと女性
- 6. 前半の纏めに代えて 月経と鎮魂
- 7. 月 --- 生命と宇宙諸力の仲介者
- 8. 神話にみる月の諸力
- 9. 母性とは何か──イシス神話
- 註
128ページ
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