メルヘンの世界観
[本]

ヨハネス・W・シュナイダー(著)
高橋明男(訳)
「地上の生へと勇気づけるメルヘン
シュタイナー教育の代表者として世界的に知られる著者がアジアのメルヘンとグリム童話を具体的にとりあげながら、そこに秘められた人間の成長と人類の歴史をめぐる深い叡智の意味を解き明かす日本での連続講演集。」(本書オビ文より)
「シュナイダー氏によれば、メルヘンの中で「ロバ」や「カエル」に魔法で姿を変えられた主人公は、本当の自分を見失った人間を表しているのです。
幼い子どももまた、自我に目覚め、知性を発達させるにつれて、それまでの根源的な一体感や、幼児特有の豊かな想像力を失っていきます。それとともに、子どもは物質の世界、現実の人生の中に入っていくことになります。そこは、さまざまの「悪」が働く世界です。しかし、シュナイダー氏によれば、メルヘンとは、そのような恐ろしい現実からの逃避を促すものではありません。むしろ、根源的な世界から離れ、ひとり地上の世界の中に入っていこうとする人間を、メルヘンは勇気づけようとします。メルヘンの主人公が、貧しさやさまざまの苦難の中で、自分の本来の故郷に思いを馳せるとき、また愛を働かせるとき、あるいは地上の現実の中で培った思考力を駆使するとき、「超越的な存在」が手を差し伸べます。それらの存在たちの力を借りながら、人間は地上における現実を生き、やがて自分の本来の「人間性」を取り戻し、地上でしか得ることのできない「新しい宝」を手に入れるのです。
これから人間として成長し、人生の現実の中に入っていこうとする幼い子どもたちに、そのようなお話を語って聞かせることには大きな教育的価値がある、とシュナイダー氏は言います。しかし、大人である私たちも、自分が生きているこの世界、この人生について考えるとき、孤独に感じ、不安にかられることがあるのではないでしょうか。そんなとき、シュナイダー氏のこれらの講演の内容は、とても身近な意味をもってくるように思われます。
もちろん、本書の中で展開されているのは、人智学的観点からなされたものではあっても、やはりヨハネス・シュナイダー氏個人の解釈であることには変わりありません。ルドルフ・シュタイナーは「童話の解釈」について語ったとき、メルヘンの意味について考えようとするなら、各人が「人智学の叡智をそのままに認識し、人智学の世界観から学びとったすべてのことを土台にして、メルヘンの中に入り込もうとする意志」をもたなければならない、と述べています(『メルヘン論』五二ページ)。
本書の講演の中で、シュナイダー氏はまさに人智学を踏まえつつ、自分の目でメルヘンを捉えようとしています。私たちはそこから多くの示唆と刺激を受け取ることができます。そのうえで、こんどは自分たちの目でメルヘンを、ひいては日本の神話や昔話を研究していくこと、それが私たちのこれからの課題であると思われます。」(本書「訳者あとがき」より)
【目次】
- メルヘンの三つの類型
- メルヘンの世界と現実の世界
- 第一の類型
- 不思議な羊飼いの少年
- やまなしもぎ
- みなしごの少年と魚
- 不思議な羊飼いの少年
- 第二の類型
- 金の子びとたち
- 半身の少年
- お月さまとお星さま
- 金の子びとたち
- 第三の類型
- ロバの王子
- 王女と霊の森の魔王
- 手なし娘
- ロバの王子
- メルヘンの世界と現実の世界
- 人間の発達と運命
- 子どもの成長と発達
- 灰かぶり
- 赤ずきんちゃん
- いばら姫
- 灰かぶり
- メルヘンを通して見た人類の歴史
- 雪白さんとバラ赤さん
- ルンペルシュティルツヒェン
- 雪白さんとバラ赤さん
- 人間の運命
- ホレおばあさん
- 星の金貨
- しあわせハンス
- ホレおばあさん
- 子どもの成長と発達
- 秘儀参入の道
- 神々の世界から地上の世界へ
- 池のなかの水の精
- 白へび
- 池のなかの水の精
- 悪魔の役割
- 悪魔のすすだらけの兄弟
- 三本の金の髪の毛を持った悪魔
- 悪魔のすすだらけの兄弟
- メルヘンの中の秘儀参入者たち
- カエルの王さま
- 忠義者のヨハネス
- カエルの王さま
- 現代における秘儀参入のあり方
- 少年たいこたたき
- 神々の世界から地上の世界へ
- 訳者あとがき
寸法:横 約13.6cm×縦 約19.4cm×厚み 約19mm
221ページ
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