幼児のためのメルヘン（シュタイナー教育文庫）

[本]

スーゼ・ケーニヒ（編著）
高橋弘子（訳）
民話、著者の作ったもの、さまざまの国の昔話を編纂した17のお話。楽譜もあるので、お話にあわせて歌えます。1989年冬芽社刊のものを1999年に再刊
「この本の著者、スーゼ・ケーニッヒ女史は、芸術に捧げた長い人生を歩んでこられました。オイリュトミストとして、言葉を、そして音楽を踊られました。そして「教育芸術」においては、幼児教育者として、子どもたちのための物語に生き生きとした表現を与えたのです。
メルヘンは、さまざまな国の民族の魂の源から生じました。
ケーニッヒ女史はそのような民族の魂の源から発する母性的＝教育者的なファンタジーをそのままに生かして、小さなメルヘンを物語り、あるいはそれを人形劇のために脚色します。そこには個人的な主張や、芸術家特有の功名心はありません。この本に収められたメルヘンと人形劇は、子どもたちとの触れ合いの中から出来上がりました。心を込めて、ふさわしい仕方で子どもたちにこれらのお話を語って聞かせるとき、私たちはメルヘンの魔法が働き始めるのを感じます。
メルヘンは文芸作品ではありません。それは教育という芸術に、子どもたちとの聖なる遊戯に、仕えるべきものなのです。
この本にあるメルヘンは、シュタイナー幼稚園で語り継がれているものです。けれども「子どもの王国」という地上でもっとも美しい国を、新しい意識で育てようとする試みがなされているところではどこでも、私たちの実践のささやかな成果が、子どもたちの「魂の栄養」としてお役に立つことができるかもしれません。」（本書「はじめに」より）
以下、訳者あとがきより
「かつて人間の生活は自然により近いものでした。そこでは今日のような深刻な教育の問題もおこらず、幼い子どもはいつのまにかしっかりと成長していきました。ところがテレビやビデオが家庭のなかに入り込み、生活がすっかり機械によって簡便化してしまった今日では、考えられないような教育の諸問題がおきています。幼な児がすくすくと成長するのは、簡単ではない時代になってきました。
（中略）昔の大人は、仕事の手を一寸休めた時、子どもにお話をせがまれました。また夕方になっていろりに火をくべながら、お話をくり返してしてあげたものです。
今の子どもはテレビによってお話してもらっています。同じように子どもたちは喜んでテレビを見ていますが、そこには大変大きな違いがあります。テレビやビデオでは、子どもは人間を、人生を自分の感覚で体験できないのです。安心して心を寄せて、肌のぬくもりのなかで、お話のなかに入り込み、その主人公になりきり、ファンタジーを駆使できないのです。テレビではイメージを外から与えられてしまいますが、お話では自分でイメージを作っていきます。幼児は夢みる存在であり、ファンタジーの特性があります。自分で空想する喜びをテレビはとり上げてしまうのです。
お話を聞かせてもらった子どもは、主体性と独創性のある豊かな人間性を身につけるとともに、現実感覚のある人間に育っていきます。（中略）子どもの魂はパンのみでは育たないのです。お話は子どもの魂のミルクなのです。
ルドルフ・シュタイナーの教育理念に基づいて教育を行なっているシュタイナー幼稚園は、連盟加盟園だけでも世界中に600園以上数えられます。本書はこの連盟の教材集であり、幼稚園では、ここに収録されているおはなしとメルヘンが、一日に一回必ず、同じ定められた時間にくり返して語られます。カーテンをしめ、ローソクをともして、子どもたちは円になって座りお話を聞きます。何べんでも同じお話を聞きますので、子どもたちはそのうち全部覚えてしまいます。話し手が順序や言葉を間違えでもしますと、訂正してくれたりします。それでもシーンとなって喜んで聞き込んでいます。知識ではなくて、何かが子どもの魂の奥深くに働きかけていっているようです。」（本書「訳者あとがき」より抜粋）
【目次】

はじめに
人形劇の舞台セットについて
幼児のためのメルヘン
- いろいろなところへ連れていってもらおうとした男の子
- こぶっこ坊や
- ピンパーネル
- 三びきの子ブタ
- 山の小人
- ちょうちんごっこ
- 白い子馬
- ヤギの兄弟
- 大ぐらいの猫
- チョウチョのきょうだい
- 炎の城に閉じこめられた王女さま
- 五ひきのヤギ
- 大きなカプ
- 小さなお城
- ホットケーキをつくりだす手ひきうす
- ホットケーキ
- ホットケーキ物語
訳者あとがき