境域に立つ 1 現代人の危機と人智学
[本]
ベルナード・リーヴァフッド(著者)
丹羽敏雄(訳)
オランダが生んだ最も傑出した人智学者/精神科医である
ベルナード・リーヴァフッド著作の本邦初訳。
ルドルフ・シュタイナーの
「人類は境域を超えた」という認識に立ち、
現代に生きる上での処方箋と、彼自身によって実践された
バイオグラフィー的治療法の基礎を与える。
暖かくふかい考察は他に類を見ない、隠れた名著。
本書を通して流れる赤い糸は中心から流れる自我発達の過程です。
・・・・・・・・・人智学的発達の道では、
つねに外側への歩みと内側への歩みの間の均衡が問題になります。
・・・・・・・・・意識魂の時代の課題は、人々の間で善を、
とくに社会生活の小さな事柄の中で善をなすことです。
これをなそうと私たちを鼓舞する駆動力は、
愛の中で世界と結びつく心の力なのです。
(本書より抜粋)
[訳者あとがきより引用]
リーヴァフットの仕事の集大成とも言える本書「境域を立つ」は、ルドルフ・シュタイナーによる「人類は境域を超えた」という、私たちが置かれている時代の事実認識に基づいています。それは、これまで私たち人間を守っていた内と外の「境界」が破れ、私たちを未知の諸力にさらし、私たちを混乱させ、不安に落としいれることを意味します。ますます増加する神経症や抑鬱、現実逃避や薬物依存といった時代の病の多くがそこからやってくるのです。
(中略)
ルドルフ・シュタイナーの思想と仕事が日本に紹介され始めて、すでに三十年以上が経ちました。どんな素晴らしい思想であっても、それを受け取る人間が置かれている社会や文化にその思想を適応し、それと格闘していく中でさらに発展させていかなければ、思想は容易にドグマ化し、形骸化してしまいます。ですから、シュタイナー教育のみならず、日本にも根付きつつある、様々な「運動」がさらに発展していくためには、人智学のさらなる「消化」と「社会化」が求められます。そうした動きの一助になることを訳者は願っています。
[本書P22より引用]
本書第一巻は、古代の秘儀について述べたあと、人智学の様々な専門分野を扱います。心理的出来事に関心をもつすべての読者が洞察できるようになる基礎を、それは与えてくれます。そしてまた、それは、第二巻の基礎ともなります。そこでは、実際の症候群や心理治療法の問題が詳細に議論されます。
この第二巻は神経症の教科書ではなく、むしろ、いくつかの症候群を例証的に議論します。
[本書P155より引用]
惑星諸過程に関する本書は以降の章で必要な背景を与えます。そこで、惑星の影響という観点が(とくに10章と二巻3章において)さらに掘り下げられます。いわゆる「二重惑星過程」の概念は、バイオダイナミック農法の調合剤のために五十年代初めに著者によって練り上げられ、その後ほどなくアントロポゾフィー医学にも応用されました。これは、二、三の出版物となって結実しました。その中で、一方では、農業調合剤の効果が明らかにされ、他方では、内科における病気の過程との治療の関連が明らかにされました。[1]同じ観点で霊的発達での障害にたいして合理的・霊的にアプローチする際の基礎になります。
[1]B.C.J.Lievegoed『The Working of the Planets and the Life Processes in Man and Earth(人間と地球における生命過程と惑星の働き)』Stourbridge1951参照
バイオダイナミック調合剤から練り上げられた「二重惑星過程」は、医学はもとより他の分野にも応用できることとは思われますが、少々難解です。(惑星と調合剤は、身体の臓器と同じように対応しています。「バイオダイナミック生物育成ガイド」参照)
ベルナード・リーヴァフッド(1905年〜1992年)
1905年9月2日、インドネシアスマトラ島メダン生まれる。オランダで医学を学び精神科医となる。1931年オランダで最初のケアを必要とする子どもたちのための治療教育施設「太陽の家」を設立。企業や組織の開発、成人人材教育について人智学的なアプローチから研究を行い、実践する企業コンサルティング機関NPIを設立。バイオグラフィー的視点を取り入れた医療活動の基礎を築く。若者のための自由大学設立、ロッテルダムのエラスムス大学で教鞭をとる。オランダ人智学協会の代表を務めながら、人智学の社会化の実現に生涯を捧げる。
代表作に、『人生の諸段階』や『境域に立つ』、『21世紀に向けて』、『共同体を開発する』、『魂の救済』、さらには自伝的な『針の目を通して』などがある。
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