シュタイナー医学講義 --- アントロポゾフィー的治療

[本][健康・医学・治癒教育]

ルドルフ・シュタイナー（著）
小林國力・福元晃・中谷三恵子（訳）
本書は、GA313(1921.4.11～18 ドルナッハ)の講演録です。
「1921年にシュタイナーが医師や医学生を対象におこなった連続講義。現代医学の枠組みを補完し、人間存在を自我、アストラル体、エーテル体、物質体からなる全体的存在としてとらえなおすことで、より包括的な治療のための視点を示す。実際の症状を取り上げて人間有機体と宇宙全体との関係性から病気と健康を論じ、そこから治療に至る新たな認識を示すアントロポゾフィー医学を学ぶ上での最重要基礎文献。
人間の物質体、エーテル体などの構成要素が、病気になる場合と治癒する場合ではどのように作用するかを明らかにしたいと思います。（中略）それは、人間の外側にある物質によって、人間の諸構成要素が、どのような影響を受けるのかということです。その物質は、特に治療薬として使用することのできる物質であり、人間の有機体に対して単に物質的なものとは違った影響を及ぼすことによって、治療薬として作用することのできる物質です。」（裏表紙より）
「本書は、ルドルフ・シュタイナーが一九二一年四月十一日から十八日までスイスのドルナッハで、主に医師や医学生を対象に行った連続講義の講演録、Geisteswissenschaftliche Gesichtspunkte zur Therapie (『シュタイナー全集』第三一三巻 [GA313])の翻訳です。この連続講義は、本書の第一講の冒頭にあるように、前年の一九二〇年の三月二十一日から四月九日に同じくドルナッハで行われた連続講義 Geisteswissenschaft und Medizin (GA312)を補完、発展させるために行われたので、後者を第一医学コース、前者を第二医学コースと呼ぶことがあります。これら二つの連続講義は、一九二五年にシュタイナーが医師のイタ・ヴェーグマンとの共著として出版した著書Grundlegendes für eine Erweiterung der Heilkunst (GA27) (邦題『アントロポゾフィー医学の本質」、水声社、二〇一三年)とともに、アントロポゾフィー医学を学ぶ上で最も基本となる重要な文献とされています。（中略）
本書にもあるように、シュタイナーによって確立されたアントロポゾフィーでは、そのような人間存在全体を自我、アストラル体、エーテル体、物質体という、それぞれ性質の異なる四つの本質的な要素から成っていると考えます。しかし、それらは、一般によく考えられているように何か漠然と存在しているのではありません。また、それらの要素の関係性や相互関係は、単純に図式的に理解できるものでもありません。本書の中では、これらの本質的な要素が、人間の身体の各部位や器官によってまったく異なった仕方で働きながら、複雑な相互作用を行っていて、その上それらの作用は緻密に分化していることが述べられています。そして、アントロポゾフィー医学において、健康と病気の状態を理解し、それを実際の診断や治療へとつなげて行くためには、それらの本質的な要素に存在する複雑に働く法則性を理解して、人間有機体と外界の環境や物質との関係性、さらには宇宙全体との関係性をも把握することが必要であることが分かります。本書では、そのような観点を学ぶために、実際の現象や病気ならびに個々の物質などを取り上げて説明がなされています。
一方、この連続講義と並行する形で、Heileurythmic (GA315) (邦題『オイリュトミー療法講義』涼風書林、二〇一四年)の連続講義が一九二一年四月十二日から十七日まで行われました。そして、本書の第九講は、そのオイリュトミー療法の連続講義の最終回でもあり、医師たちに対するオイリュトミー療法への導入として行われたものです。オイリュトミー療法はその後、アントロポゾフィ一医学独自の重要な治療手段として発展しました。日本でも、海外で資格を取得したオイリュトミー療法士たちが前記のIPMT開催前から活動を始めており、それが医師養成コースの開催など、日本におけるその後のアントロポゾフィー医学の活動へとつながる基礎の一つとなりました。
以上のように、本書の内容は、アントロポゾフィー医学を学ぶ上で、非常に重要なものですが、同時にとても難解です。今回、翻訳を行ったグループは、およそ十年前に、オイリュトミー療法士の中谷三恵子の発案で、小林國力、福元晃、山本忍の三人の医師が参加して翻訳に取り掛かかりました。しかし、翻訳作業は想像以上に時間のかかるものでした。（中略）本書の内容にしっかり取り組むことで、現代の物質中心の見方にとらわれない観点を学ぶことができると考えます。」（「訳者あとがき」より）
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